錦絵創始者が確立した詩的で抒情的な美人画の理想形
鈴木春信(1725-1770)は1765年頃に錦絵(多色摺り木版画)技法を確立し、 浮世絵に色彩革命をもたらしました。それまでの単色・二色摺りから 十数色を使用する色鮮やかな表現を可能にした技術革新者です。
春信の美人画は単なる美女の描写を超え、古典文学や季節感、 心理描写を巧みに織り込んだ「詩的美人画」の境地を開拓。 若い女性の清楚で可憐な美しさを理想化した表現で知られています。
「錦のように美しい絵」という意味で、多色摺り木版画の美称。 春信以前は紅摺絵(べにずりえ・2〜3色)が主流でしたが、 春信が10色以上を使った精密な多色摺り技法を確立。 これにより浮世絵は芸術的に飛躍的発展を遂げました。
春信の錦絵技法確立は、日本美術史における重要な技術革新です。 単色から多色への飛躍は、視覚芸術の表現可能性を劇的に拡大し、 後の日本美術全体の発展基盤を築きました。
美術作品に文学的要素を深く織り込んだ春信の手法は、 後の総合芸術的表現の先駆けとなりました。現代のマンガ・アニメなどの 物語性を重視する日本の視覚文化の原点の一つと言えます。